第5回
2012.08.03 UP

2冊の絵本との衝撃的な出会いが、ゲームとしての面白さへ昇華。

Dokuro

『Dokuro』(所要時間36分)

どこか悲しいドクロと姫の不思議な逃避行。
チョークタッチで描かれた絵本のような世界が舞台の本作品。
この世界観を、どうやってゲームにしたのか?


絵本を持ってきて「ちょっと、この2冊を読んでください」って。

Dokuro_3.jpg

 

森下  : 「Dokuro」というゲームを企画しようと思った経緯を教えてもらえますか?
風間  : ゲームアーツでは、企画発表会というのがありまして、そこで別の人が出していた「ロマンシングナイト」というゲームが、知る人ぞ知るという企画なんですけど、お姫様抱っこをフィーチャーした8ビットの世界観で、レトロゲーのグラフィックで作られたゲームで。
森下  : あれは尾崎が出した企画だったよね。とりあえず、「音だけ作ってきましたー」っていう企画だったと思うけど。
その時の一番最初のフレーズが、「みなさん、最近お姫様を助けてますか?」という。
風間  : よく覚えてますね。
森下  : そこだけ覚えてます。
あとは、「音だけ作ってきましたー。」というのと。
風間  : それがいい線までいってたんですけど、そこで止まっていて、惜しいなって思ってたんですね。
その後、私はグロいゲームの企画ばかり出してたんですが、子供が生まれまして、本屋の絵本のコーナーに出入りをするようになり、改心したんです。
グロイものばかり見てちゃいかんと。
で、絵本を見てるうちに、2冊衝撃的な出会いがありまして。非常にあたたかみのあるタッチで描かれたかなり泣ける絵本なんです。それを見た時に、こういうタッチで、子供も遊べるゲームを作ってみたいと思ったんです。で、まずは、ちょっと味方を作ろう作戦を取ろうと思いまして、当時仲良くさせてもらってた市川さんに何にも言わずに絵本を渡したんです。
市川  : 風間が絵本を持ってきて、「ちょっとこの2冊を読んでください」と。何かこれをモチーフにしてゲームを作りたいんだなって、意図は感じたんですけど、絵本って大人になってから読む機会がないじゃないですか。
それに忙しくて、机の端っこで書類と一緒に山積みになってたんですね。でもふと、夜仕事が終わって、8時9時ぐらいに読んでみたら、大人ながら、感動して。
森下  : うるっときた?
市川  : うん。うるっとして。
後ろ向いて、涙が出るのを社員に見られないようにしたりして(笑。
すぐに風間を呼んで、こういうゲームを作りたいのか?と、ゲーム性はこれからとして、絵本の世界を重要視したゲームを作ってみようということから、始まったんです。

「この世界観を、どうゲームにして伝えるか。」

森下  : 風間の企画は、グロイゲームが多かったんで、正直な話、企画段階で話を持ってきた時に、「どうしちゃったのかな?」って思いました。今まで散々ダメ出しをし続けてたのが、悪い方向にいったのかなーって思ってしまったんだけど。
このゲームの企画書自体を黒板に見立てて作ってきたけど、他の人達に説明した時に、ほとんどの人に「面白いの?」と言われたのを覚えています。面白さをどう伝えたらいいんだろう?というのが、非常に印象として残っています。
市川  : まず、世界観から入ってますから。
ゲームとしての面白さの前に、この世界観をどうゲームにして伝えるかっていうところから入ってるから、さて、どうしよう?ってとこだよね。
森下  : 企画審査会で尾崎のゲーム企画で、「お姫様を助けてみませんか?」と言った時に、みんながそうだなって思ったものをモチーフに風間が持ってくるのがすごいなって思いましたね。
風間  : 尾崎の企画はいい線をいっていたんですが、8ビットの絵ってのはあるっちゃーある。3Dバリバリのスーパーシェーディングっていうのも、既にありふれているんです。そこにすごい予算と期間をかけて突っ込んでいっても、目立たないと意味がない。
で、悩んでいた時に、絵本のタッチと出会って、ここってまだ誰も踏んでいないとこだな、って思ったんですね。このグラフィックでいけば、トップエンドの技術は使ってないかもしれないけれど、少なくとも人の心にひっかかるものが作れる。なので、尾崎の企画と、このグラフィックを合体させた時に、これはいけると思ったんです。
ただ、騎士が主人公っていうのはちょっと弱い、インパクトが薄いんです。昔から、悪役が主人公の話に燃えるタイプだったので、じゃあ悪役が主人公だったら、面白いんじゃないかと思って、チョークの絵をグラフィッカーに書き始めてもらってたんですが、書いてもらった絵の1枚の敵ザコのドクロを見た時に、「こいつが主人公だったら絶対面白いな」って。しかも魔王を裏切ってお姫様を助けるって展開とか超燃えるんじゃないかって思って。こいつを主人公にしようよって提案した後に、しかも主人公がイケメンとドクロを使いわけるという、いわゆるオーソドックスなヒーロースタイルだったら面白いと思い、企画書を完成したんですね。
森下  : ドクロが結構かわいそうなんだよね。
市川  : そうなんですよねー。

「最初、難易度調整でやらかした。」

森下  : 開発にあたって、苦労した点とかを聞いていきたいのですが。
風間  : 自分自身がわりとハードコアゲーマー寄りだってことと、開発チームもそういう人間が多かったので、最初、難易度調整でやらかしたことがありまして。このぐらい「みなさん出来るでしょ?」と思って、最初「Dokuro」の完成版を社員のみなさんにプレイをしてもらった時に、全然できなかったんですね。「難しすぎだろう」って声をたくさん頂戴しまして、ちょっと凹みました。
市川  : あれは・・(苦笑)。
社長も僕も触って話はしましたけど、ギミックの部分はおいといて、アクション部分が非常に厳しい仕様になっているので、たくさんの人に遊んでもらうためにはどうしたらいいのか、と。難しいままでいくのがいいのか、それとも調整した方がいいのか、風間とは議論したところですね。
森下  : そうね。所感としては、このままだと、本当にゲームとしてクリアできないゲームになるんじゃないかなぁ、と。
市川  : 最初、そんなかんじでしたね。
森下  : それが、社内テストを結構やったよね。風間がゲームを持って女性社員のところに行って。
風間  : ステージ1だけは、誰でもクリアできるという(笑。
森下  : うちの会社では「オーバー・ザ・ショルダー」という方式を使ってね。任天堂の宮本さんが言われていた言葉なんですね。後ろから見るというもので、風間に、ポンと渡してプレイをしているのを後ろから見て何も言うな、と言ってるんですけど。俺がたまたま通りかかった時に、俺が「ココはこうで」と言ってしまって。(笑
風間  : ぶち壊しじゃないですか!?(笑
市川  : 社長KY。(笑
森下  : 自分で言っていて、イライラしちゃうんだよね。
市川  : 気持ちはわかるんですけどね。でも、自分が指示だしといて・・・
森下・市川  : 自分が言っちゃうから!(笑
森下  : それがわかんないの!?って。
市川  : 言いたくなる気持ちはわかります。自分が知っちゃってますからね。
風間  : 人に解法を語りたくなるってのは、良いゲームだって証拠なんで、安心したのもあるんですけど。

「『Dokuro』は、触ってプレイしてもらわないとわからない」

 

森下  : 今回、なんと、なんと!価格が2,400円。そして、ダウンロード版も1,800円と。非常にリーズナブルな価格設定ですが、どう思っていますか?
市川  : 価格に関してはいろいろ社長とも話をしたんですけど、そもそも「Dokuro」というタイトルは触ってプレイしてもらわないとわからないと、僕も風間も思っていて。今年、「ラグナロク オデッセイ」というタイトルを出したんですけど、これは見た目で派手なアクションゲームでユーザーも想像しやすいゲームだったんですね。「Dokuro」って世界観推しでいってたので、ゲームの内容がわからないってことで、たくさんの人に触れてもらうためには、まずは手に取りやすい価格なんではないかと。
発売前には、体験版を3週連続で配信したり、お店に足を運んでもらうユーザーのためには、店頭では早めに体験してもらえるプロダクトコードを配布したりとか、いろんな試みをした結果、やっぱり値段も重要なんじゃないかと。
本来であれば、フルプライスぐらいの価格で売りたいってのはあったんですけど、やっぱり価格を下げて触れてもらいたいってのを、社長と相談して。価格を決めるのも1か月ぐらいかかりましたからね。
森下  : 一か月以上かかったんじゃないかな。
市川  : そうでしたね。それぐらいかかって決めましたね。
森下  : 2,400円だから、ボリュームが少ないわけではないですしね。
実際にお客さんの反応を見ていると、このプライスで、このボリュームで、やり応えががあり、達成感があってプラチナトロフィーにも対応している、というと、実は非常に良心的なプライスだなーと思っています。で、値段に関しては、多くの人にやってもらいたいっていうのもありますし、自分たちとしては、こうした王道的なゲーム性を重視したゲームをお客様に手に取ってもらいたいと考えると、自信のあるプライスだなと思っています。

 

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